***島本融句集『午後のメニスカス』抄 |
*母は闇に坐して涼しき銀河系
*吾亦紅野辺のアウラというべきか *くすぐられてしなやかな子の夏合宿 *すこやかになまあしやはりさむいという *てふてふの旧かなめきし羽根づかひ *秋灯に偽書ほどほどの読みごたえ *様式とはめだかみごとに散るごとく *二河白道一輻だけの花の寺 *ミネルヴァの梟を言い冬学期 *ネウマ譜の起伏のごとき午睡かな *十代連はチアののりにて阿波踊り *謝恩会のゼミ学生の抜き衣紋 *青嵐におののきやめずメニスカス *酔漢がハモってゆくや歳の暮 *波奈理児のすはだに生絹(すずし) 添えまほし *ビリティスの偽書も編みたし蔦の花 島本融氏は、未知の人であったが、偶然に私のHPを見た、と言ってメールを送って来られて交友するようになった。本人は何も仰言らないが、検索してみて、氏が河井酔茗、島本久恵氏のご次男であること、群馬県立女子大学教授であられたこと、東京工芸大学のことなどが、サーフィンの結果判った。 島本氏には昨年上梓された歌集『アルカディアの墓碑』もあるが、ここでは数年前の句集を取り上げた。 島本氏の俳句は見て判る通り、美学者としての教養から横文字が多いが、私も一応、西欧文学を専攻したことになっているので、少しも違和感がない、どころか親しみを覚える。題名の「メニスカス」とはラテン語の辞書を引いてみると「半月板」と書いてあるが、ご本人に言わせると、別の意味らしいがメール文を紛失したので、後日に訂正することにする。 女子大の先生をしておられた関係から、キャンパス風景を詠まれたものが多いが、例えば *すこやかになまあしやはりさむいという という句などは、とても面白い。女の子の風俗と言い草を見事にトリミングしていると言えるだろう。そして、少しエロスが、かいま見られるのも島本氏の特徴である。 とにかく、ゆっくりと味わってみたい。 この部分は私の詩のサイトK-SOHYA POEM BLOG に収載していたのだが、運営が英語のサイトであり、日本語という西欧語とは違う特殊な言語変換のために「文字化け」を起してしまい、そのサイトは断念したので、そこから、ここに移すことにした。 「目次」の**草弥の詩作品『草の領域』、**連詩三人集『命あるものへの頌歌』も同様である。 |